美容師の働き方を考える

カットしたくない」美容師は、甘えじゃない。

美容師なのに、カットがしたくない。練習の時間が、どうしても気が重い。——もしあなたが今そう感じているなら、まず知ってほしいことがあります。その気持ちは、逃げでも甘えでもありません。

美容師アシスタントの方へ

読了 約8分

「カットしたくない」と思う自分を、責めていませんか

夜の営業が終わって、みんなが帰りはじめる時間。ウィッグを前に立つと、ふっと気が重くなる。「今日も練習か」と思う自分がいて、その瞬間、もうひとりの自分が小さく囁きます。——「美容師なのに、こんなふうに思っちゃダメだ」

もしあなたがこの感覚に覚えがあるなら、この記事はあなたのために書きました。

美容師の世界では、「カットができるようになって、スタイリストとしてデビューする」ことが、ほとんど唯一の正解として語られます。だからカットの練習に身が入らない自分、できれば避けたいと思っている自分を、多くの人が「怠けている」「向上心がない」と感じて、ひとりで抱え込みます。

でも、本当にそうでしょうか。カットがしたくないという気持ちは、あなたの努力不足から来ているのでしょうか。それとも——もっと別の、あなた自身の正直な声なのでしょうか。

よく聞く声
お客様に喜んでもらうのは大好き。シャンプーもカラーもスパも、やりがいを感じる。でも、カットの練習だけがどうしても好きになれない。この気持ちを、誰にも言えなかった。

この記事では、その気持ちを否定も肯定もせず、一度ちゃんと言葉にしてみます。そのうえで、あなたが知らないかもしれない別の選択肢についても、最後にお話しします。

なぜ、カットの練習はこんなにつらいのか

まず、あなたの感じている「つらさ」は、気のせいでも弱さでもありません。構造的に、カットの練習はとても過酷です。理由を分解してみましょう。

「練習が好きで好きでたまらない」という人も、確かにいます。でも、それは全員ではありません。むしろ、つらいと感じるほうが自然な側面もたくさんあるのです。あなたが感じているしんどさの中身を、ひとつずつ見ていきます。

営業後の、終わりのない自主練

多くのサロンで、カットの練習は営業時間が終わったあとの時間に行われます。一日中立ちっぱなしで接客をして、シャンプーで腕も腰も疲れきったあとに、さらに数時間ウィッグと向き合う。体力的にも精神的にも、これは決して軽いものではありません。「練習する元気が残っていない」のは、あなたがサボっているからではなく、それだけ日中ちゃんと働いている証拠でもあります。

終わりが見えにくく、評価も厳しい

カットには明確なゴールがありません。ウィッグが切れるようになっても、次は人の髪、次はスピード、次はデザイン——と、求められる水準は上がり続けます。先輩からのチェックは厳しく、できないところばかりが目につく。「成長している実感」より「まだ足りない」という焦りのほうが大きくなりやすいのが、カット練習の構造です。

手が荒れる、時間が削られる、お金もかかる

練習用のウィッグ代やシザー代が自己負担のサロンも少なくありません。プライベートの時間は削られ、休みの日まで練習に充てる人もいます。報われる保証がないなかで、自分の時間とお金を注ぎ込み続ける。この負荷の大きさを、「やる気がない」の一言で片づけるのは、あまりにも酷だと思うのです。

つらさには理由があります。カットの練習がしんどいのは、あなたの精神力が足りないからではありません。長時間労働の延長線上にあり、終わりが見えず、コストもかかる——そういう構造の中に置かれているからです。まずはそのことを、自分で認めてあげてください。

「したくない」の正体は、向き不向きかもしれない

つらさの構造を理解したうえで、もう一歩踏み込んで考えてみたいことがあります。それは、あなたの「カットしたくない」が、一時的な疲れなのか、それとも本質的な向き不向きなのか、ということです。

このふたつは、似ているようで全く違います。見分けるための問いを、いくつか挙げてみます。

  • カットそのものに興味が持てない一方で、ヘッドスパやカラー、トリートメントには素直に「もっと上手くなりたい」と思える。
  • 「お客様の髪を切る最終責任を持つ立場」を想像すると、ワクワクよりも重さやプレッシャーを感じる。
  • 指名を取って売上を追いかけるより、目の前の一人をていねいにケアすることに喜びを感じる。
  • スタイリストになった先の自分の姿が、正直あまり思い描けない。あるいは、思い描いても気が重い。

もしこれらに複数当てはまるなら、あなたの「したくない」は、単なる疲れではないのかもしれません。それは「自分が本当に力を発揮できる場所は、そこではないかもしれない」という、まっとうな自己認識の可能性があります。

人には向き不向きがあります。これは能力の優劣ではなく、ただの方向の違いです。緻密なケアやお客様との関係づくりに長けた人が、必ずしもデザインカットの第一人者を目指す必要はありません。得意なことと、業界の「正解」が、たまたま一致していなかっただけ。それは、あなたが悪いわけでも、劣っているわけでもないのです。

スタイリストにならない=負け、ではない

とはいえ、頭でわかっても、心が追いつかないかもしれません。「スタイリストにならないなんて、美容師として中途半端」「同期はみんなデビューしていくのに、自分だけ取り残される」——そんな声が、どうしても消えないと思います。

ここで一度、立ち止まって考えてみてほしいのです。「スタイリストになること」は、誰が決めた正解なのでしょうか。

それは、長らく美容業界の主流だった一本道のキャリアモデルです。アシスタントは「修行期間」、スタイリストは「一人前」、という前提。でもこの前提は、絶対の真理ではありません。時代も働き方も変わるなかで、「ずっとアシスタントとして、ケアの専門職を極める」というキャリアが、少しずつ現実のものになってきています。

考えてみてほしいこと
あなたがお客様だったとして。心をこめてヘッドスパをしてくれる人と、技術はあるけれど気もそぞろにカットする人。どちらに、また来たいと思うでしょうか。

「自分には向いていないこと」を無理に続けて消耗するより、「自分が心から打ち込めること」で誰かを幸せにするほうが、ずっと価値がある。少なくとも、お客様にとっては。そして、おそらくあなた自身にとっても。

スタイリストにならないことは、レースから脱落することではありません。そもそも、走るべきレースが違っただけかもしれないのです。

アシスタントの仕事は、本当はすごく専門的

「アシスタント」という言葉には、どうしても「補助」「下積み」のニュアンスがついて回ります。でも、その中身を冷静に見てみると、実はとても専門性の高い仕事だと気づきます。

ヘッドスパは、れっきとした技術職

近年、ヘッドスパの需要は大きく伸びています。頭皮の状態を見極め、的確な圧で凝りをほぐし、お客様を深いリラックスへ導く——これは一朝一夕でできることではありません。指名がつくヘッドスパの担当者も珍しくなく、それ自体が立派な「売り」になる時代です。

カラーとトリートメントは、仕上がりを左右する

カラーの塗布の精度、薬剤の選定、トリートメントの見極め。これらはサロンの仕上がりとリピート率を直接左右する、重要な工程です。「アシスタントだからできる範囲」ではなく、「これができる人がいるから、サロンが回る」——そう言えるだけの専門性が、そこにはあります。

お客様との信頼関係を、最前線でつくる

シャンプー台での何気ない会話、施術中の心配り。お客様が「またこのサロンに来たい」と思う理由の多くは、こうした関係づくりの積み重ねから生まれます。それを担っているのは、多くの場合アシスタントです。これは、お店の財産そのものです。

つまり、カットをしないからといって、あなたの仕事の価値が下がるわけではありません。むしろ、ケアの領域を突き詰めることは、これからの美容室にとってますます欠かせない強みになっていきます。

「指名されるアシスタント」になれる

意外に思うかもしれませんが、ケアの技術が高い人には、ちゃんとファンがつきます。「あの人のシャンプーが気持ちいいから」「あの人のスパを受けたいから」と、お客様が指名で来てくれる。カットをしなくても、あなた個人が選ばれる理由をつくれるのです。これは、自分の技術が誰かにとっての「特別」になっている、という確かな手応えです。やりがいのかたちは、ひとつではありません。

「ずっとアシスタント」という働き方は、もう存在する

ここまで読んで、「理屈はわかった。でも実際、ずっとアシスタントとして働ける場所なんてあるの?」と思ったかもしれません。

正直に言えば、まだ多くはありません。ほとんどのサロンは、アシスタントを「スタイリストになる前の段階」として扱います。だから、カットをしたくないと感じる人は、行き場を失いがちです。

けれど、ここ数年で「専任アシスタント」という働き方を正式に設けるサロンが、少しずつ現れはじめています。カットを前提とせず、ヘッドスパ・カラー・トリートメントといったケアの専門職として、長く腰を据えて働ける。そういう環境です。

こんな働き方が、現実になってきています。

・カットの練習がなく、営業が終わったら帰れる

・ヘッドスパやケアの技術を、専門職として磨いていける

・「スタイリストにならないこと」が、引け目ではなく前提になっている

・正社員として、安定した雇用と給与のもとで続けられる

こうした選択肢があることを、まず知ってほしいのです。「カットしたくない自分はおかしい」と思い込んで業界を去ってしまう前に、自分の得意を活かせる場所が、ちゃんと存在しているということを。たとえば表参道のturn TOKYOは、まさにこの「専任アシスタント」を前提にした働き方を用意しているサロンのひとつです。

自分の「好き」と「得意」から逃げないために

最後に、いちばん伝えたいことを書きます。

「カットしたくない」という気持ちと向き合うことは、逃げることではありません。むしろ、自分の本当の「好き」と「得意」から逃げないための、まっすぐな選択です。

無理に向いていない道を進んで、すり減って、いつか美容師そのものが嫌いになってしまう。それが、いちばんもったいない結末だと思うのです。お客様に喜んでもらうのが好きで、ケアの仕事にやりがいを感じられるなら、その気持ちこそが、あなたが美容の世界で生きていける何よりの理由になります。

カットをするかしないかは、本質ではありません。あなたが、誰かをきれいにして、笑顔にできること。それが美容師の核であって、その実現の仕方は、ひとつではないのです。

「ずっとアシスタントでいる」という選択肢は、後ろ向きな妥協ではありません。自分の強みを正しく理解したうえで選ぶ、ひとつの前向きなキャリアです。もしあなたが今、その気持ちに気づきはじめているのなら——その声を、どうか大切にしてください。

専任アシスタントという働き方

「カットしない」を、前提にできる場所があります。

表参道の美容室 turn TOKYO は、ヘッドスパ・カラー・トリートメントを軸に、専任アシスタントとして長く働ける環境をつくっています。カットの練習はなく、ケアの専門職として、あなたの「好き」と「得意」を活かせます。

まずは話を聞くだけでも大丈夫。急かしません。

turn TOKYO の働き方を見てみる

あなたのその気持ちは、きっと正解です。
自分の得意を、これからも信じてあげてください。

美容師の働き方を考えるブログ|turn TOKYO(表参道)